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GPS神話 その2

2009 年 12 月 5 日 土曜日

ということで前回の続きです。

世に多く出ている「GPS対応」のうち、かなりの割合で実はGPSには対応していません。
かといって嘘をついているか、というとそうでもないというのがこの問題の困るところでして、端的に言ってしまうと、広義のGPSと狭義のGPSがある、ということです。

狭義のGPSというのは前回まとめたとおりのものなんですが、広義のGPSというのは何かというと、GPS由来の位置情報を使用するもの、というものです。
そのようなものの中で一番多く出回っているのが、GPS対応携帯電話でしょう。
GPS対応の携帯電話は、GPS衛星からの位置情報を取得しているわけではありません。実際にGPS情報を取得しているのは、携帯電話基地局です。

もともと基地局にとって、GPS衛星の情報を取得するメリットは「時計あわせ」がメインでした。前回のまとめにもありましたが、GPS衛星が発する電波の正体は時報です。
(もちろん時計サーバーを用意すれば各基地局に正確な時間をいきわたらせることも可能でしょうが)
携帯端末が直接GPSの電波を受信するのは効率が悪いので、サービスとして提供できるレベルの「GPS機能」になりません。携帯キャリアの電波が届く範囲内にいながら、さらに30秒だの1分だの時間がかかるようなものを使ってもらえるとは思えません。

ということで、携帯電話でつかっている「A-GPS」という位置情報システムは、GPS衛星の情報を地上の基地局で受け取り、そこから情報を分配する、という仕組みでできています。GPSの恩恵をできるかぎり多くのデバイスで利用できるようにした、すばらしい仕組みです。

しかし、携帯が精度の高い位置情報を得るためには、携帯側が複数の基地局の電波をとらえ、それぞれの基地局からの位置を割り出さなくてはなりません。

携帯は可能な限り通信品質を上げるために、基地局を探し続けるように作られています。これはかなりバッテリーを消費する挙動ですので、余計なことをしたくはないところです。
ですので、基地局を探す挙動は、(公開されていない…と思うのですが…実測調査ができますので)ある一定の時間、状況の変化によって発動するわけです。
つまり、携帯側から見ると、位置情報のアップデートは電波受信状態の強弱に影響されます。いまいる場所(地形や建造物など)によって、位置情報の精度が変動する可能性があるわけです。さらにいえば、電波の混雑ぐあいによっても「基地局ゲット待ち」が発生するわけで、とぎれとぎれの場合にはやはり影響をうけることが予想されるわけです。

もちろん、携帯キャリアの中の人たちは、こうした状況が起きないよう日々泣きながらお仕事をされているわけですが、これは携帯キャリアの人たちとは関係なく、そもそもA-GPSの仕組みに由来するものです。
たぶん、携帯のGPS機能を作っている人たちに、「携帯のGPSって精度あんまりよくないねー」などと言ったら、おそらく激しく怒って言うでしょう。「バッテリが速攻で切れてもいいならいくらでも精度上げられるよ!」

さて、ここでiPhoneというヤツが出てきまして、使い始めた人たちが「あれ?携帯よりもGPS精度がいいんじゃないの?」と言い出しました。
実際、精度は格段に良いのです。ではこれはなぜかというと、さらにプラスされた機能があったわけでして…。

ということで、まさかの前中後編。続きは次回…。


全体としてかなり端折っていますので、この文章は完全に正確ではありません。
専門家の方からすると「違うよ!」というところもあると思いますが、そこは「部外者がしゃしゃり出てきやがって、しかもわかってねえなあ~」とニヤニヤしていただければと思います。

GPS神話 その1

2009 年 11 月 8 日 日曜日

「GPSってすごいんでしょ?cm単位で場所がわかるんでしょ?」というような質問をよくされます。
確かに新聞やニュースなどでGPSについて語られる時、「今は10cm単位でわかっちゃうんです」というような説明がされることもあります。
が、それは正しくありません。原稿書いている人も本当の仕組みを把握していないんじゃないかと思うことがあります。結果として、世の中にはGPS全般に対する過度な期待感というか、誤解が生まれてしまっているんじゃないかと思うのです。

まずGPSのおさらいをしますと、

  1. GPSは衛星から電波を投げ、受信するシステム(一方通行です)
  2. GPS衛星の電波は直進性が強いので空が広く見える場所である必要がある(=屋内で使用できない)
  3. 衛星はただ時報を投げてくるだけの存在
  4. 民生用と軍事用がある(軍事用の方が精度が高いですが利用できません)
  5. GPSで位置を認識するためには複数の衛星の電波を受け取る必要がある(計算で位置を算出する)

というのが概要です。
(元々船舶用なので、海上ではこれで全然問題ないですよね)

さて、Wikipediaによれば、現在のGPS衛星は、民生用では95%以上の確率で10m程度の精度で位置を取得することが可能とされています。
ここで重要なのは、

  1. 最高が10mであること
  2. 5%の確率で10m以上誤差が発生すること
  3. 10m/95%というのが限りなく理論値に近いこと
  4. 衛星から電波を受け取る装置の都合は想定していないこと

の4点です。
つまり、「10m程度の誤差で位置を認識できるはず」というシステムなのであって、「確実に10m以内に位置を確定できる」システムではないのです。

ではなぜ本来の力が出せないのかというと、いくつか理由があります。

  1. 精度の高い受信機は高価
    アホみたいな話ですが、実は一番影響があります。最も入手しやすいのは数千円~1万円までの機種だと思いますが、その価格帯では正直まともに衛星の電波をキャッチすることすら難しいのです。たとえば、私の持っている8,000円程度の受信機は、晴天でないと衛星が複数キャッチできません。薄曇でも電波をつかまえるのに15分~30分かかります。
  2. 空が狭いと電波が弱くなる
    あまり日常生活において「空が狭い」という言い方はしないと思いますが、これはまさに字面どおりです。ビルに囲まれた場所や高架のそばなどの人工物の存在だけでなく、崖下など自然の地形にも左右されます。
  3. 邪魔な電波/電磁波が多い
    常にではないようですが、時々影響するようです。すぐそばを電車が通過すると精度が激的に下がる、という現象を何度か体験しました。

つまり、人間の生活している場所では、GPS精度の低下を防げないのです…。
実測してみたところ、数百m程度の誤差はあたりまえのように出ます。
10m程度の円内におさまるつもりでいるのに!

ところが、実はもっと大きい問題がひそんでいます。
なんと、世の中の「GPS機能」がついた機械というのは、実は多くがGPSではないのです!

じゃあ何だということになりますが、それはまた次回…。